旧社名 (有)米澤神仏具製作所  
     
容子経歴容子日常生活容子日記
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  平成七年 1月〜3月  4月〜5月    
  平成八年 4月〜5月    
  平成十三年 2月〜4月    
  平成十六年 10月〜12月    
  平成十七年 1月〜12月     
  平成十八年 1月〜9月
  容子の死の前後を振り返って
【日記の原本】
  第2回目の日記 平成二年五月〜平成八年迄 短歌を始める
  • 平成四年一月
    年明けて 去年となりし 昨日と 
    朝の空気は 違う香りて

    正月を 家族と共に 迎えいて 娘のつくりくれし お節の旨さ

    病院で 友達と年賀状  増えて嬉しい 病のおかげ

    病院で 友となりたる 人の賀状  病も時には 幸せとなる

    振袖の 娘の姿 写しいる 夫のまなじり 優しく下がり

    湾岸の 二ュースを見つつ 振袖の 
    吾娘の写真に 與じる後ろめたさ

    戦争の 二ュース見ながら 成人の 
    記念写真を 見る後ろめたさ

  • 二月
    奇跡起き 動く身体に ならぬものか 
    老い行く姑よ 許して下さい

    誰にとも 腹立てられず 我身をば 
    責めてみたとて 何も生まれず

    見舞っても 何もできない もどかしさ
    夫や子の事 笑って話す

    病室で 夕食の刻 近づけば 米とがねばと 起きかける母
     
    病床で 夕食の刻 起きかけて とがねばと 言う姑哀れ

    骨折れた 足のことなど もう忘れ  歩いて帰ると ケロッ言う母

    骨折の 足の痛さも 忘れいる姑  歩いて帰ると 子らを困ら

    病院より 夫入院の 電話あり 
    悪しき事のみ 脳裏をめぐる

    心配が 笑い話と なりぬれど 
    一抹の不安 胸に残れり

    信じてた 人に背かれ 案ずるに 
    夫バネにして 表向きに生く

  • 三月
    春来ても 何も変わりは しないのに  優しい陽差しに 心や和むる

    キッチンの 窓に飾りし かすみ草  さやさやゆれる 春の昼下がり

    キッチンの 窓でさやさや かすみ草 心休まる 春の昼下がり

    毎日の 家事から解放 されたいと  娘の願い 胸にこたえる

    我病みて 雛飾りせず 七年なり  節句来る度 雛に詫びいる

    母の世話 出来ぬが故に 風当たり  冷たく感ず 仕方なきこと

    リューマチの 女の代わりに 祖母のむつき  換える娘の 指にマニキュア

    家事こなし 祖母の世話する 娘ら学生 リューマチの母は 為す術も無く

  • 四月
    子の気性 祖父や父とは 似ていぬが 
    仕事する手は 血を引いており

    近頃の夫 穏やかに なり過ぎて 
    早死にせぬかと 秘かに震るる

    我が未来 展望無けども この未来  
    数多夢あり 足引くなかれ

    老人も 幼子達も 歩みおり  
    椅子の我 只感心する

    姑の見舞い 只語るしか 出来ぬ身体は  笑顔を作り もどかしさ隠す

    姑の世話 出来ぬ身体に 風当り  冷たく感じ 耐え忍ぶのみ

  • 五月
    雛人形 武者人形も 六年出さず 吾が病故 許し乞う

    亡き父の くれしこいのぼり 庭もなく その腹にいつ 薫風吹うや

    連休の 人でのニュース 詠み乍ら  コーヒーすすり 昼寝楽しむ 
        
    五月晴 外に出ぬのは 罪のごと  さつきや若葉 待っているよな

    祝日に たまに見かける 日の丸に  昔の習わし 吾も忘れる

    晴れた日の 新緑清し 五月雨に 露光る葉の なおに美し

    すっと伸び 紫の花 清清し しょうぶ生ければ 背筋も伸びし

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  • 六月
    病故 毎日我に 尽くす子に 花もらう 後ろめたさ

    母の日に 親の資格の 無き我に プレゼントもらう 後ろめたさよ

    病窓より 蜂入り来て 払えぬ身 
    目で追いかけて 息ひそめいる

    骨折りて 使えぬ右手 かばいつつ  
    左手の技 上手くなりゆく

    リューマチの 痛みしばらく 
    小休止  身体の軽さ夢なら 覚めるな

    やはり夢 痛み戻りて しかめ面  しばしの休み 帰り来ぬか

    朝夕の 涼しき日々に 秋感じ 日中の暑さに 愚痴と安堵

    夏逝くは 淋しきなれど 秋風の 
    虫は鳴けども 秋風は来ぬ

    胆石の 手術終わりて 眠れる姑  管に囲まれ 小さく沈む

    老齢に むち打ち手術 終りなば  細き身体は 管に囲まれ

  • 八月
    姑の病室 皆寝たきりの 老婆達 
    それぞれの過去 偲びて悲しい

    行く末を 教えてくれし 老人は  うつろな瞳で かゆを食むなり

    子供には 迷惑かけずに 死にたいと  痛む老人の 思いは同じ

  • 九月
    言葉とは 取り方により 刃なり 時には人間 やめたくもあり

    言葉とは 両刃の剣 物言わぬ  虫の世界にも ルールあるらん

    言葉とは 真綿ともなり 刃にも  人間とは かくも難し

    知恵の輪を はずした時より はめた時 喜び感ず 人の心も

    姑見舞う この道すがら 指揮通い 売家売れて 医院も建てり

  • 十月
    病む我に 娘の来し本 生きること  考えさせる ものばかりなり

    黙々と 本読むのみの 音我が耳に  秒刻む音高し つるべ落としの秋

    いつの間に 主の音途絶え 秋ふかし  衣服一枚重ねて 着るや

    秋風の 心地良さから 肌寒さ  
    忘れられる 風鈴はずす

  • 十一月
    一日の 大半床で 過ごす姑  気力衰え 勝気さ何処へ

    姑の髪 白く薄うに なりたるを  帽子かぶせて 似合うとほめる

  • 十二月

    飲み過ぎて 身体の不調訴えし  父にガンだと おどしいる子ら

    娘らと 女同志の 話はずみ  中に入れぬ 夫ふて寝する
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