旧社名 (有)米澤神仏具製作所  
     
容子経歴容子日常生活容子日記
  昭和六十二年  7月〜9月 11月〜12月
  昭和六十三年  1月〜3月    
  平成二年 5月〜12月     
  平成三年 1月〜12月     
  平成四年 1月〜12月     
  平成五年 1月〜3月  4月〜6月 7月〜9月  10月〜12月 
  平成六年 1月〜3月  4月〜6月 7月〜9月 10月〜12月 
  平成七年 1月〜3月  4月〜5月    
  平成八年 4月〜5月    
  平成十三年 2月〜4月    
  平成十六年 10月〜12月    
  平成十七年 1月〜12月     
  平成十八年 1月〜9月
  容子の死の前後を振り返って
【日記の原本】
  第2回目の日記 平成二年五月〜平成八年迄 短歌を始める
  • 平成二年五月
    娘買いし パジャマの色は おばん色  抵抗感ず 四十路の我は

    外泊で 家族と共に すごす夜  きばって歩く 姿みせたり

    けたたましい バイクの音に 眠り覚めバッカヤローと 怒鳴ってみたい

    眠れぬ夜 歌を一首と ひねるほど  目はさえわたり 看護士の靴音響く

  • 六月
    子を残し 闘病送る せつなさよ  枕を濡らす 消灯の後
    密室で 一度ぐらいは 思いきり  泣いてみたいよ 霧雨の午後
    気がつけば ひげの生えたる 我が息子 幼さ残し 今日で十八 
    免許取り 日の浅き息子 帰り遅し  夜半の電話に身の縮むなり
    夜半過ぎ 若葉マークの 吾子帰らず  電話の音に 身の縮む思い
    茜空やみて 都会へ帰る 雀達  騒音の中 それでも我が家
    フン害と 追い払われし鳩 哀れ  野山自由に 住めぬものかな
    耳すまし 遅い娘の 帰り待つ  車の音に 今度こそはと
    雨吸うて 頭垂れたる 紫陽花や  細き茎にて 肩は凝らぬか
    夏至近し 井戸端会議も つい長く  遅い日暮れに 気もゆるみ 

  • サラダ日記より〜
     午後4時に八百屋の前で 
    献立を考えているような幸せ
     「寒いね」と話しかければ「寒いね」と 
    答える人のいるあたたかさ
     潮風に君のにおいがふいに舞う 
    抱き寄せられて貝殻になる
     「嫁さんになれよ」だなんて カンチュウハイ2本で言ってしまっていいの
     妻のこと「母さん」と呼ぶためらいのなきこと 
    あたたかきこと
     電話から少し離れてお茶を飲む 聞いてないよというように飲む
     万智ちゃんが欲しいと言われ心だけ ついていきたい花いちもんめ
     愛ひとつ受けとめられず茹ですぎの カリフラワーをぐずぐずと噛む
     ゆっくりと大地めざしてゆくように 動きはじめている夏に船
     左手で文字書くきみの仕草青 めがねをはずす仕草黄みどり
     親は子を育ててきたと言うけれど 勝手に赤い畑のトマト
     栗3つゆでて一人の秋とセリ 遠くに君の海感じつつ
     ハンカチを取り出す君の綿シャツ チェックに夏の蝶が来ている
     「この味がいいね」と君が言ったから 7月6日はサラダ記念日
     5百円札のうす青色の中 キャベツが笑う(たそがれ横丁)
     東京へ発つ朝老けて見ゆ これから会わぬ年月の分
     疑ってみたい日もあるたらちねの 母の娘で娘の母
     なんでもない会話なんでもない笑顔 なんでもないからふるさとが好き
     「平凡な女でいろよ」激辛のスナック菓子を 食べながら聞く
     723から724に変わるデジタルの 時計見ながら快速を待つ
     やさしいね陽のむらさきに透けて咲く 去年の秋を知らぬコスモス
     ひとつだけいいそびれたたる言の葉の 葉とうがらしがほろほろ苦い
     愛された記憶はどこか透明で いつも一人いつだって一人
     空の青海のあおさのその間 サーフボードの君を見つめる
                                                             〜サラダ日記より抜粋

  • 七月
    試練なき はなけれども されど競
    超える剣山  数多あるらん

    我病 家族に重荷 背負わせど  皆の健康 感謝するなり

  • 八月
    灼熱を 陽浴びた 庭木に水まけば 匂立つなり 土や花

    夏の熱 路面に浴ぶ アスフャルト  
    夕立すもて 湯気立ち昇る

    若者の 陽焼けした腕 たくましハート  ときめき なまいき気分

    秋深し 人恋しくて 電話する  
    受話器置く後 なお淋し

  • 九月
    我が本性 真正面から 見つめる時
    避けて通りて 我をごまかす

  • 十月
    一年を 病院で過ごし 苦薬あ  
    帰る日間近 思いは巡る

    秋深し 人恋しくて 電話す 
    受話器置く後 なお淋し 

  • 十二月
    八分で 天にとどきし ソューズ  地上の我の 亀の歩み哉

    人間の 偉大な力に 圧倒され  人間の醜さ しばし忘れる

    宇宙にて ドッキングする 不可思儀さ  心と心 会ことの 難し

    無重力で 泳ぐが如し 秋山さん  歩けぬ者は 泳いでみたし

    熱ありて 病院食が 食べられず  無性に恋しい 亡き母の味

    十二月十七日
    退院の 挨拶も そこそこに  迎の娘の 過密スケジュール

    親も子も 勉学に熱 注がずに   受験迫りて 開き直るや

    受験日に パン買いて 行く子と  許せ心を込めた 弁当作れず

    雨音の 激しくなりて 薄暗き  部屋を 周りて 受験の子を待つ

    挨拶も そこそこに 退院す  迎えの娘の 過密ステジュール

    退院し 外泊にはない 安らぎ  緊張感じ 寝つかれぬ夜

    年末の 商店街の 二ュース見つつ  部屋を周りて 受験の子を待つ
ページの最初へ
  昭和六十二年  7月〜9月 11月〜12月
  昭和六十三年  1月〜3月    
  平成二年 5月〜12月     
  平成三年 1月〜12月     
  平成四年 1月〜12月     
  平成五年 1月〜3月  4月〜6月 7月〜9月  10月〜12月 
  平成六年 1月〜3月  4月〜6月 7月〜9月 10月〜12月 
  平成七年 1月〜3月  4月〜5月    
  平成八年 4月〜5月    
  平成十三年 2月〜4月    
  平成十六年 10月〜12月    
  平成十七年 1月〜12月     
  平成十八年 1月〜9月
  容子の死の前後を振り返って