旧社名 (有)米澤神仏具製作所  
     
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53年6月22日 中外日報  10月24日 日刊工業新聞
 
   
 
 
     
                  
昭和53年(1988)9月1日
技に生きる  京都の伝統産業
 
 (編集・発行  京都伝統産業青年会)
                                       発刊によせて
 
  京都の伝統産業は、平安京以来今日まで、気の遠くなるような永い歴史の中で、優秀な技術と格調の高さをつたえております。それは先人たちのたゆまぬ努力の賜物であります。
私たち伝統産業に携わる若者は、積み重ねられた技術と不屈の精神を受け継ぎ、次代に継承しなければならない使命を痛感いたしております。しかしながら、近年社会環境の変化にともない、各業界に公害や後継者の問題がとりざたされました。そこで、これらの問題をふまえ、明日の伝統産業を語り合う場として、昭和38年に各業界の青年会が参集し、誕生したのが京都伝統産業青年会であります。ここに、京都伝統産業青年会は早くも本年、設立15年目を迎えることになりました。
その間、京都府、京都市をはじめ、関連の親組合や各界の有識有縁の皆さまから暖かいご指導とご支援を賜る一方、当青年会諸先輩の並々ならぬご努力によりまして、現在、加盟35団体、会員2000名を数えるに至り、各分野において活躍を続けております。
本年9月、「第8回世界クラフト会議・京都」が開催されるにあたり、協賛として全国の若者と当青年会が総力を結集し、日本の、京都の伝統産業の真の価値をアピールするため、「世界にはばたく伝統の技」をテーマに、実演と展示を一堂に集め、全国伝統的工芸品展と京都伝統産業総合展を同時に開催する運びとなりました。そして、この一大事業の一環として、広く伝統産業を紹介するとともに、手作りのすばらしさと創作の喜びを伝える必要性を感じ、15周年記念総合展実行委員会が、この冊子を発刊することとなりました。専門的に見れば、不十分なところが多々あるとは思いますが、明日の伝統産業を思考しさらに後継者育成の一助となれば、これに勝る喜びはありません。最後に、困難な条件のもとで立派にこの冊子を完成していただいた桂広報部長をはじめ、部会の皆さん、そして製作関係の方々のご尽力に対し、深く感謝の意を表す次第であります。

京都伝統産業青年会会長    米澤正文
15周年記念総合展実行委員長  中川正次
 
 
 
昭和54年(1979)1月5日 夕刊京都
   
京都伝統産業青年会会長  米澤 正文(ゴルフ歴 6年
 
     
  スコアより英気養う ボール追って歩け歩け  
   
     もう5,6年前になりますね。友人に誘われて始めたんです。青年会の仲間と話し合っていてもゴルフを知らないと面白くない。みんなが夢中になるゴルフとはいいったいどんなもんだろうー。でも、やってみると難しいもんですな。学生時代テニスをやっていたので、球技には多少自信があったんですが、でんでんダメ。悪口をたたかれながら、アイアンで一生懸命練習したんですよ。それでも一向にうまくなりません。大津カントリーのメンバーで、プライベートハンディは30.ことしは20ぐらいにスコアを伸ばそうと心ひそかに考えています。ゴルフの良さは第1に気分転換。  
 

手仕事の多い私どもにとって、家の中から解放されて、グリーンの上にスーと立つのは、なんともいえない気分です。他S等の上手下手はあっても、気分の上では名前通り“グリーンの王様”といったとことです。第2に克己心を養うことです。ゴルフのようなスポーツは団体戦と違って、コツコツとやる個人競技ですので、他人に迷惑をかけない、自分を上手にみせたい。いろんな気持ちが交錯する中で、平常心を保つということは大変なことです。仕事では覚えられない感覚が教えられて、いい勉強になります。第3には健康にいいことです。あんな小さなボールを追って、よく歩きますね。普通なら考えられないような距離、10`20`と歩くんですから、身体に悪いわけがない。やり始めてから肩のこりも忘れました。昔は職人がゴルフやるなんて、とても考えられなかった。
 
  どれが生意気な顔をしてグリーンの上にたてるんですから、結構な世の中になったもんです。短い期間ですが、思い出として残っているのは仙台へ遊びに行ってゴルフをやったことです。緑深い高原で真白な花がこぼれるように咲き乱れ、打つのを景色に見とれていました。あんな素敵な所でプレーできるなんて、ゴルフとはでいたくなスポーツだなとつくづく思いました。先輩からはマナーを守って、楽しめるゴルフをやれといわれていますが、私たち、職人にとっては、スコアより英気を養う仕事の栄養剤としてゴルフを楽しんでいきたい。もちろんスコアの方もよくしたいんですが、正直いって、気まぐれな私には無理でしょうな・・・。  
   
  昭和54年1月15日  
 
                                       きょうと府民だより第T号 京都府広報課
 
   
  林田知事を囲んで伝統産業青年会と座談会  
   
    西陣織、清水焼などの伝統産業は京都を代表するものの一つである。千年の歴史の町に息づく伝統の技術は、いまどのように発展しようとしているのか。 林田知事を囲んで、次代の伝統産業をになう京都伝統産業青年会のヤングパワーに、伝統産業を語ってもらった。なお、京都伝統産業青年会は、昭和38年に京都府の指導により結成され、昨年創立15周年を迎えた。現在、20業種35団体、約千三百人が所属している。
出席者 会長の米澤正文氏、副会長の吉田隆男氏・同北村忠司氏・同中川正次氏、総務委員長の樋口恒樹氏と林田京都府知事の6人。
 
  司会は夕刊京都新聞編集局長の白土辰雄氏。  
     
  青年が守る伝統産業
指導所を通じ技術をアドバイス
 
     
 
司会 先だって京都で開催された第8回世界クラフト会議で後継者問題がクローズアップされましたね。手仕事の世界が脚光をあびましたが、後継者不足は世界的な問題になっているようです。ところで、京都の場合はいかがですか。

米澤 私は仏具の業界に入って15年になるのですが、はじめのうちは、仕事の将来について非常に不安でした。このまま仕事を続けてうまく行くのだろうかと、悩んでいた時、伝統産業青年会が結成されました。同じ悩みや問題をかかえている多くの仲間がいることを初めて知って勇気づけられました。昭和45年の万博の時に第1回総合展が開かれたわけですが、うれしかったですね。これこそ次代をになう青年のやることだという大きな喜びを感じました。
 
  この前の創立15周年記念総合展で知事さんにも見て頂いた竹材の青年会は非常に活気があるんですが、この人たちもはじめは自分らだけだと思っていたんです。仲間と力を合わせれば大きな事が出来るんですね。青年会に入っている人々は、自分が後継者であるという自覚と、将来にたいする希望を皆持っていると思います。ただ、全体として見た場合、まだ脚光をあびていない業種もあって、PRとか後継者の養成が必要ではないかと思っているのですが・・・。

司会 北村さん、西陣織はいかがですか。

北村 いつまでも「西陣村」の感じでは後継者の育成はできません。大きい所では運営や構成を考えながら後継者の育成にも力を入れていますし、小さい所でもそのような気風が育ってきていますね。

司会 知事さん、陛下も京都の伝統産業のことを御心配になっておられると話されていましたね。

知事 先だって陛下に西陣と丹後の織物のことを申し上げたのですが、陛下はこれからの伝統産業をどういうふうにして育成しているかとお尋ねになられ、生糸相場の現状にも深い御関心を示されました。西陣と丹後の織機の破砕については、失業者をどう救済しているかとお聞きになられました。そういうわけで、伝統産業の育成ということを非常に御心配になっておられますね。私は、伝統産業法のことを申し上げ、それに基づいて京都の織物とか友禅染、清水焼、仏具などの保護育成が行われていることや、若い人を養成して技術を伝えていかなければならないことを申しあげたわけです。これは大事なことですからね。府としても業種毎に助成していこうと、京都府立中小企業総合指導所を通じて技術の助長にも頑張っているのですよ。青年会には非常に期待しています。農家の青年にも同じことが言えますね。一人ずつ孤立していたのでは不安だし力もないですからね。一つの組織として次代の産業を、になっていけるようにしなきゃいかんです。
 
   
  零細な業種にこそ光を “京都”が世界に誇れるように  
   
 
司会 吉田さん、青年会の研究の場はどうですか。

吉田 油絵、運筆、日本画などを青年会が養成講座という形で開催していますが、これは一般にも呼びかけて安い授業料で来て頂いています。僕は手描友禅ですが、意匠の考案の方の後継者の心配はないと思いますが、描く方は心配です。そこで募集しますとワーッと来て、2,3年たってひと通りのことができるようになると飛び出て自分の仕事をしてしまう。そこで技術がストップして安いものの仕事しかできない。すばらしい技術を駆使してこそ京友禅といえるのです。すぐれた腕を持つ職人さんというのは技術を教えませんけど、やはりそういう方がたのアドバイスというか技術指導があれば、若手の技術も進むし、互いに技を競うことによって業界の水準も上がると思うのですが。

 
  知事 優れた技術者が技術を公開してくれますか。

吉田 長い間かかって習得した技術というかコッといったものを、手を取って教えてくれというのではないけれど、仕事のサマを見ると勉強になりますね。

米澤 壁に突き当たって悩んでいる時に、見たりひとごといわれるとパッとわかるんですね。

知事 技術の展示会といったものはどうかな。その人に実際やってもらってね。そしてみんな見に行くようなそういう人を指定したりね。

米澤 そうですね。そういうふうだと面白いですけど。

中川 知事さん、私ね、京都という土地は1番に西陣、次に友禅、次に陶磁器、それからまぁ遅れて仏具・・・・

吉田 竹が出てきいひんなぁ・・・(笑)

中川 私は15周年の実行委員長として正直感じるのですが、35団体・20業種の中で、西陣は立派な会館ももち、別格です。けれど、おおかたは零細で伝産法も知らん業界もあるんです。西陣などの将来は軌道にのって今後の方向もきまっていると思うのですが、悲しいかな、竹・人形・造園など必死で頑張っているところも多いと思いのです。だから、天皇陛下が心配してくださるのは西陣ではなくて(笑)。もっとほかの業界への育成指導を望みたいです。先だってのクラフト会議でロード・エクルズ会長さんと話したのですが、英語は私だめなんですけど(笑)。全世界において、7,80工程を一堂において見せることのできるのは京都しかないと思うんですね。ここらを考えて頂いて、西陣だけではなしに。
 
 
知事 京都はいたるところに伝統産業が息づいていますからね。世界中どこを探してもほかにないでしょうね。

米澤 一時、府の助成で海外研修をやれということでヨーロッパを視察しましたが、あちらでは飛行機や鉄道で一つ一つの業界を渡り歩くわけですね。ところが京都は一つに全部あるんですからね・・・。いろいろな事情があって海外研修は中断されていますが、復活をしてほしいですね。

吉田 役所を通すと見学もスムーズに運ぶと思います。

知事 ジャワのサラサ、スペイン=トレドの象嵌など、各地では別々に発達していますが、京都では全部一堂に定着していますね。

中川 フランスのジャガー織も、中国の刺繍も京都に定着している。

 
  米澤 で、その中に我われは毎日必死になって生きているわけです。  
   
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