旧社名 (有)米澤神仏具製作所  
     
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昭和53年(1978)1月15日  “伝統”33号

                                         
            発行者  京都伝統産業青年会 会長 米澤正文
                                                              編集者  広報委員会
  “年頭ごあいさつ”                 京都伝統産業青年会 会長 米澤正文  
 
                               15周年迎える伝産青年会  
                               記念総合展で飛躍の年に
   
       
    明けましておめでとうございます。昨年中は伝統産業青年会の運営に対し、積極的なご協力を賜り有難うございました。伝統産業青年会も発足以来本年で15年目を迎えました。長期不況のつづく中での15周年、この大きな節を転機として、伝統産業に従事する我々は飛躍の年にせねばならないと考えます。    
 
1)伝統産業の輪を、世界に広めよう。 
1)世界の工芸産業に、日本の若さを送り込もう。
1)伝統の技術の上に、新しい歴史を創造しよう。
T)青年の勇気と協調で、明日の生活をきづこう。

以上は伝統産業青年会が昭和47年に会員諸兄から公募して、制定した伝産憲章であります。この憲章を心にとどめ、各自が一つ一つの問題点を見つめ、具体化していくことが今一番必要な時機であろうかと思われます。本年は、15周年に当たり、昨秋準備委員会を発足し、中川準備委員長を中心として活動が始まっております。単位青年会及び会員諸兄のご協力をお願いいたします。
   
     一方、目を外に向けると、第8回世界クラフト会議・京都大会が本年9月岡崎一帯で開催されますが、前年度からの引き継ぎ事項として当青年会もこれに参加をいたしております。
世界クラフト会議とは「クラフトが文化的な生活にとって必要欠くべからざるものであるという認識を高め、同時にクラフトによって世界に友好の輪を広めるため、故ケネディ大統領の発案により1964年創設され、手仕事を通じての唯一の世界機構」である。第1回総会がアメリカ(ニューヨーク市)で開かれ、以後2年毎に開催され、第8回総会が日本(京都)で行われます。
   本年9月には、世界各国80数カ国からクラフトマンが京都に参集されるこの大会に、青年会15周年記念総合展として協賛事業を行うことに協議会で認められました。
しかし、経済情勢の不安定な時だけにいろいろな批評があると思われますが、一時の時の流れに惑わされることなく、伝統産業という大きな展望に立ち、難局に当たれるのが我々青年の特権であり、真価を問われるのではないでしょうか。
   伝産憲章にもうたってあるように、秋には世界のクラフトマンとの交流はもちろん、日本の誇れる伝統産業の技術・技法を公開して認識して頂けるまたとない場が与えられようとしています。この機を我々がしっかりと手にし、明日の伝統産業の礎にしようではありませんか。会員の皆さんの一層のご協力をお願いいたしまして新年のご挨拶といたします。
   
     
 
昭和53年2月14日 京都新聞
   
   
   きょう伝産デザインシンポジウム              府立中小企業指導所    
       
 
今年秋、アジアで初めての世界クラフト会議が京都で開かれることもあって、手づくりの伝統工芸品を見直す機運がたかまっているが、京都府立中小事業総合指導所ではこれを機会に14日午後6時から京都市上京区の京都社会福祉会館でデザインシンポジウムを開く。
テーマは「暮らしの中での伝統産業製品の新しい展開考える」日野栄一・京都教育大教授、宮崎幸一・京都国交芸協組理事、米澤正文・京都伝統産業青年会長らを講師に現代生活に生かす製品づくりについて討議する。伝統産業の従事者が対象で、無料。
   
       
 
昭和53年2月18日 京都新聞
   
   
                    伝統産業の先駆的使命  原点に戻る反省が必要    
                                                             京都伝統産業生年会  会長 米澤 正文    
       
  京都の伝統産業は京都の風土と文化のなかで優れた技術、技法を持って今日まで伝承され、全国他産地の先駆的役割を果たしてきた。それは私達の先人、先輩のたゆまぬご努力の賜である。    
 
私達伝統産業に従事する青年は、この優れた技術と不屈の精神を受け継ぎ、さらに将来に伝える重大な責務を自覚している。昭和30年後半まで伝統産業は「斜陽産業、滅びゆく産業」といわれ、多くの業種、業界が何のつながりもなく、ただ自分の仕事場で黙々と仕事をし、伝統の重みと将来に対する不安とが入り乱れていた。

 しかし、14年前に京都府美術工芸課のご斡旋により各業界の青年が語り合う場としての「京都伝統産業懇話会」が発足し、その後多くの青年会が加入し、また各業界のご指導、御援助により現在の34団体の青年会が結集した「京都伝統産業生年会」にまで発展してきた。この間、伝統産業総合展の開催や欧州の工芸視察(海外研修)などの事業を実施していた。私は事業のたびに滅びゆく産業ではなく、発展していく新しい産業が青年会を通して各々の団体と和で造られていくのだという大きな希望と勇気を与えられた。最近の近代化の進む中で改めて手作りの良さが見直されて、需要も伸びてはきているが、私達は伝統の技術を生かしつつ、現代の要求を受け入れ、新鮮な感覚で昭和を代表する製品を作り出し、次代にまで残していく使命があると思う。
   
     
   伝産法が施行され、他産地は更に京都を目標として非常な熱意をもって追いつけ、追い越せと努力しており、ある分野においては、すでに追いつかれているものあると聞いている。他産地より一歩リードするには相当の覚悟と努力が必要ではないだろうか。そのためには日常の自分の技術の研鑽はもとより広く目を他業種の製品や業界に向け、更に各々の伝統によってつちかわれた業界を冷静に見直し、反省する時期にあると思う。
このことによって各々が今何をなすべきかが明確になるのではなかろうか。また、伝統産業に従事する青年たちが手を取り合って、青年会活動を通じておたがいに喜びも苦しみも共にし、その協力によって京都の伝統産業を確固たるものにすることこそ、私達の先人、先輩の努力に報いる道だと信じている。
   
     
 
昭和53年6月28日 京都新聞
   
   完成した「京都仏具会館」
仏壇---流れ作業
   
     
 
  京の伝統産業の一つ仏壇・仏具のメッカ「京都仏具工芸会」(米澤正文理事長・京都市南区東九条西明田町)の会館が完成、鉄骨4階建て556平方bのモダンな建物の中で、伝統を誇る京仏壇がベテラン職人さんの細かい手先作業でコツコツ仕上げられている。

  市内の三百近い仏壇・仏具業者のうち木地、うるし、金箔押しなど各部門別の若手9業者が技術の研究、一貫生産などをめざして協同組合をつくり、市の協力も得て会館を建設した。館内は四階が仏師、木彫部門、三階が木地、二階うるし、一階金箔押し、飾金具と仕上げ、陳列室となっており、製材した材料ヒメコマツを屋上にチェーンブロックで吊り上げると、一階へおりてきたときは仏壇の完成品という流れ作業システム。市でも「清水焼団地などのように観光客の見学コースに組み入れてもらい、京の新名所に….」とはりきっている。
   
       
 
昭和53年7月6日 京都新聞
   
                                       着実に夢を現実に転化
                            協同組合京都仏具工芸会理事長 米澤正文氏
   
     
     「会館建設は私達の夢でした。でもこうして現実に出来上がると、今度は責任のほうが重くのしかかって、しんどいという感じもします」。先月14日、総工費1億3千万円をかけ仏壇仏具の協同製作場を完成させた米澤さん、古い慣習の残る業界で技術研究を目的に若手グループを作り、話題をまいたのが五年前。    
 
そして2年後には問屋を通さず注文をとる共同受注をはじめ、さらに今度は会館づくりと、夢を現実に転化させてきた。「会館の出来るまでは“若い者がすること”とそれほど問題にもされなかったようだが、現実に建物が出来、注文を取って仕事にかかると、業界内からいろいろなつきあげや注文がつきましてね。“好事魔多し”ということですかね」と苦言する。「もっともいろいろいわれることは、私達のやっていることが業界内に影響している。つまり一人前として認められ始めたということでしょう。順風漫帆もいいけど、色々あると逆に何くそとファイトがわき、みんなの心が一つになりますから、ものはかんがえよう。まあ、みていてください」と、元気いっぱいだ。
   
     
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